投資では「自分で決めたルールを守ることが大切だ」とよく言われます。その通りだと思います。ただ、これが簡単なことのように見えて難しい。そして難しいからこそ、一見簡単そうなことが金言のように言われるのでしょう。
実際私も自分のルールを決めてはいるのですが、そのルールを守れなかったことはあります。なぜ「自分で決めたルールを守ること」が難しいのか、を考えたところ、ルールに対する納得度が低い、ということに至りました。
この記事では、「自分で決めたルールを守ること」がなぜ難しいのかについて考えます。

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自分のルールを守ることが重要な理由
なぜ「自分で決めたルールを守ること」が難しいかを考える前に、なぜ「自分で決めたルールを守ること」が大切だと言われるかについて簡単に整理してみます。特に重要な理由は以下の3点です。
理由①:感情に支配されると判断を誤りやすいから
人間は恐怖や欲望に弱い生き物です。暴落が起きたときには「もっと下がるかもしれない」という恐怖に支配され、逆に高騰しているときには「今買わなきゃ乗り遅れる」という焦りに駆られます。こうした感情に従って動くと、結果的に「高値で買って、安値で売る」という典型的な失敗パターンに陥りやすくなります。
また、ルールを守らなくて損をすると、ルールを守って損をしたときより後悔の念が強くなり、感情的になってしまう、ということもあります。ルールを守らないで損をすると「なぜあんなことをしてしまったのだろう」「この失敗を何とか取り戻さなければ」などとなり、感情的な行動をしてまた失敗したりします。一方、ルールを守って損をしても、「これはルールにしたがったまでであり、しょうがない」と冷静でいることができます。
自分のルールがあることで、冷静に行動するための指針になります。
理由②:ルールが再現性を生むから
単発の成功は、まぐれでも起こり得ます。しかし、投資で本当に成果を出すには、安定して再現性のある行動が求められます。
自分で定めたルールに沿って売買することで、なぜその投資をしたのかが明確になり、次に同じような状況が訪れたときにも迷わずに判断できます。
成功した場合でも、失敗した場合でも、「ルールにしたがっただけ」と冷静でいられ、安定した行動をとれるようになります。
理由③:長期的な合理性・期待値に基づいた行動を継続するため
投資における成果は、往々にして「正しい判断を一度すること」ではなく、「期待値にしたがって何度も再現すること」によって得られます。
たとえば、「毎月決まった金額をインデックスファンドに積み立てる」というのは、代表的なルールの一つです。
これは短期的な値動きを気にせずに、長期的な経済成長や企業価値の上昇を信じて淡々と投資を続けるという戦略です。
この積み立てを通じて、「高いときは少なく買い、安いときは多く買う」──いわゆる ドルコスト平均法が自然に機能します。この戦略では「高値でも買う」ということが起こり、その後株価が下がれば含み損状態になります。ただ、全体的に見れば「長期的には株価は上昇する」という見立てのもと「高値で少なく、安値で多く買う」ということを続けることでリターンを得ることができるのです。
このように、長期的な合理性・期待値に基づいた行動を継続するには「自分で決めたルールを守ること」が重要になるのです。
では実際に、ルールは守れるのか?
ここまでに述べたように、「自分で決めたルールを守ること」はとても重要です。また、ルールを作ること自体はそれほど難しくはありません。問題は、このような一見当たり前の「自分で決めたルールを守ること」が難しいことです。
実際、私も自分で決めたルールを守れなかったことがあります。2025年4月の関税ショックです。
それまで私は毎日少額定額で投資信託を購入していました。そんなとき、アメリカが世界各国に対して高い関税を適用すると発表されてから、あらゆる株価指数が急速に下落していきました。私は「落ちるナイフをつかまないほうがいい?」となって分散投資を止めて様子をみることにしました。ただ、その後関税適用の延期が発表され、株価指数は底を打ちます。その後株価指数は急回復していきましたが、その急回復を目の当たりにして「あのタイミングで分散投資をやめなければよかった。。」という気持ちになりました。
問題はそれだけではありません。急回復の後、「あのときの底付近で買っておけば。。」などという気持ちになったのです。こうなると「ルールを守る」どころか「ルールにない行動をしなかったこと」を後悔しているのですから、より問題です。
このように「自分で決めたルールを守ること」は、自分でルールを決めてしたがっているつもりでも、いざとなると難しいということを実感しました。
なぜ「自分で決めたルールを守ること」が難しいのか
なぜルールを守れなかったのか。なぜルールにないことをしなかったことを後悔するのか。なにが「自分で決めたルールを守ること」を難しくしているのか。
本当の意味で自分のルールではない、これが原因だと考えます。ルールは決めた、でも実は自分で納得しきれていない。そうなるといざというときに「自分で決めたルール」を信じられなくなります。
例えば、以下の状況を考えてみましょう。
あるとき、AさんとBさんの2人が、「毎月定額、S&P500に連動する投資信託を買う」という同じルールを決めました。
Aさんはこう言いました。
「なんかドルコスト平均法っていうのがいいらしいから、とりあえず始めてみようと思って。」
一方のBさんは、こう話しました。
「ドルコスト平均法は、価格が上下する資産を長期で積み立てるときに有効なんだ。
価格が下がれば多く買えて、上がれば少なく買う。結果的に取得単価が平均化される。
ドルコスト平均法は高値掴みもするし、デメリットもあるけど、自分は相場を読むのが得意じゃないから、時間分散によってリスクを抑えつつ、長期で市場平均に乗るためにこれをやるんだ。」
数ヶ月後、相場が急落しました。
ニュースは悲観的な見出しばかり。SNSでは「まだ下がる」「今買うのはバカ」という声があふれています。
Aさんは不安になり、積み立てをストップしてしまいました。
「今はちょっと怖いから、落ち着いてから再開しよう」と。
一方のBさんは、静かにいつも通り購入を続けていました。
「下がっているなら、たくさん買える。少し前に買った分は含み損になっているけれど、それも織り込み済みだ。だからこそ、この方法を選んだのだ」と思いながら。
AさんとBさんでどちらが「自分で決めたルールを守る」ことができそうでしょうか?
自分で決めたルールが本当の意味で自分のルールであるためには、どれだけそのルールについてデメリットも含めて理解できているか、ということが重要です。そして、ルールについて理解を深めるには、他人からの情報を鵜呑みにせず、自分でちゃんと理解する、ということが重要です。
まとめ
投資において「自分で決めたルールを守ること」は、成功するための極めて重要な要素です。
なぜなら、長期的な期待値に沿った行動を続けるには、短期的な感情やノイズに惑わされない「軸」が必要だからです。
ただし──
実際にそれを守ることは、想像以上に難しい。
暴落がくれば怖くなり、暴騰すれば乗り遅れまいと焦る。
自分で決めたルールであっても、現実の相場の中では簡単に裏切りたくなる。
私自身、何度もそうした経験をしてきました。
では、どうすれば守れるようになるのか?
私がたどり着いているひとつの結論は、「ルールについて、自分自身が深く納得しているかどうか」 です。
なぜこのルールを作ったのか?
どういう場面で、どんな意味があるのか?
それを自分の言葉で説明できるかどうか。
そして、想定外の状況が来ても、「それでもこのルールに意味がある」と自信を持てるかどうか。
ルールとは、ただ決めるものではなく、理解して、自分の中に落とし込んでおくものだと思います。
そしてその理解の深さが、「守れるかどうか」を分けるのだと、今は感じています。

